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2008.04.01

連載|ものづくりの視点 No.17

経済合理性を超えた復元の意味

岩井 光男

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一方、高層棟は一日千名前後の作業者によって工事が進められている。4月15日現在、地上23階まで鉄骨の建て方が進んでいるが、大きなボリュームの中では人影はないに等しく、巨大なタワークレーンがゆっくりと資材を持ち上げて行く姿が見えるだけである。日本に西洋建築が持ち込まれてから百年余り、建築はかなりのスピードで工業生産化され、その結果、施工精度や仕上がりの程度は均一化され工期も短縮された。その立役者は多種多様な建設機械であり、IT技術の進歩によってロボット化してより複雑高度な仕事をこなすなど、その進歩はとどまるところを知らない。

 

他の多くの生産現場と同様、建築現場でも永年培われてきた人間の手仕事が機械にとって代わることが経済合理性に適うのだろうが、煉瓦職人の技のように文明開化の時代を象徴する文化としての「ものづくり」の技術については匠の技を受け継ぐ仕組みが必要ではなかろうか。復元される三菱一号館はこれから数百年先まで生き続け、経済合理性を超えて造る人の心と技を伝えることができる建築となることを期待してやまない。

Profile

元株式会社三菱地所設計 代表取締役副社長執行役員

岩井 光男

いわい みつお

Update : 2008.04.01

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