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2006.04.01

連載|ものづくりの視点 No.02

歴史をつなぐ街づくり

岩井 光男

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バブル経済とその崩壊は暮らしと文化、歴史を無視した開発は長続きしないことを証明した。これからの街づくりにその反省を生かさなければならない。振り返るに明治以来、日本の都市はスクラップ&ビルドで目まぐるしく建物が更新され、街並みが変わってきた。私が再開発に携わっている丸の内でも、百数十年の間に大半のビルが2回から3回建て替わっており、ビルの平均寿命は30~40年程度でしかない。何年かぶりに訪れた東京の街で、その変わりように道に迷ったという人の話すら聞いたことがある。ロンドン、パリといったヨーロッパの都市では、数百年の歴史を背負った建築が当然のように存在するのと比較すると、東京はまるで仮設建築の世界である。

 

ここらで我々も数百年先を見据えた街づくりをすべきであろう。地球環境のことを考えればなおさらである。もちろん一部の保存運動家のように、何でもかんでも残せというようなかたくなな思想によって街を博物館にしてはいけない。街はその時々の社会と人々の活動を映し輝くものである。新しいものと古いものとの調和こそ街には必要なのである。ロンドン、パリに負けない魅力的な街をつくるためには、街の歴史を受け継ぎ、さらに深みを増すように、人々に親しまれてきた建築をランドマークとして残していくことが有効だろう。

 

そして、歴史を積み重ねていくためには、街そのものが多くの人に開かれる必要がある。丸の内の変遷を見ても江戸時代は大名屋敷、明治時代前半は陸軍の関連施設、明治後半からはビジネス街と、ある意味で限られた人々の街であった。しかし、丸ビルが新しく建て替えられて以来、人気のなかった土日にも散策、ショッピングを楽しむ人々でにぎわっている。日本橋や六本木も含め、世代を超えた多くの人々が街づくりに関心を持っていると感じる。老若男女が街づくりの成果を共有し進化させる時代になったといえる。長年、丸の内で働きリタイヤされた方が丸の内を訪れ、街の移り変わりを楽しんでいるという話も聞いた。時の流れに耐えて豊かに成熟し、環境に溶け込みながら風景を形づくる建築を模索した前川國男にならって、人々の心に残るような街づくりを心がけ、次代につなげていきたい。

Profile

元株式会社三菱地所設計 代表取締役副社長執行役員

岩井 光男

いわい みつお

Update : 2006.04.01

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