社員座談会 三菱地所設計の工務 TOP

Profile

ユニットリーダー

コストコンサルティング部

宮澤 裕紀

大学では構造設計を専攻。先輩を通じて工務という仕事があることを知り、2000年三菱地所に入社。以来、ほぼコストマネジメント業務(新築、改修、長期修繕計画)に従事。

エンジニア

コストコンサルティング部

米山 周水

大学で不動産に関する研究に携わる中で、設計事務所のコストマネジメント業務に興味をもち、2018年三菱地所設計に入社。工務部で「みずほ丸の内タワー・銀行会館・丸の内テラス」の監理業務を2年間経験した後、2020年よりコストマネジメント業務に従事。

エンジニア

コストコンサルティング部

小池 真鈴

現場からデスクワークまで、業務が幅広いことから工務職を志望し、2019年三菱地所設計に入社。工務部で「TOKYO TORCH 常盤橋タワー」等の監理業務を3年間担当した後、2022年よりコストマネジメント業務に従事。

※役職名は掲載当時の内容になります


THEME 01
コストコンサルティング部の仕事とは

クライアントと想いを共有し、コストをデザインする

宮澤

建築をつくる時、構想段階から基本設計、実施設計、そして工事段階、最後の竣工まで、常にお金の話が関わります。コンペ時にも「この建築にいくらかかるのか」という概算工事費が必要ですし、設計や施工の途中で変更が生じれば「この変更によってコストはいくら増減するのか」がプロジェクト進行の判断に欠かせない情報です。コストコンサルティング部は、設計事務所におけるコストマネジメント業、つまり、これらの設計プロセス全般にわたる概算に加え、施工者から提示された⾒積もり内容の妥当性確認、時にはクライアントの事業予算の策定をサポートすることもあります。

米山

一般的に「コストマネジメント」というと、プロジェクトにかかるさまざまなコストをカットして、予算内に納めたり、自社の利益を増やすための仕事と思われがちなのですが、私たちはクライアントと価値観を共有し、お金の回し方、つまり事業予算をどこにどう使うのかを提案したり、コストに関する課題を解決しながら、顧客満⾜度を高めることを重視しています。

宮澤

これは、いわば「コストのデザイン」です。当社では、私たちコストコンサルティング部も構想段階からプロジェクトに参加し、設計者とともに建築をデザインする姿勢で取り組みます。以前は、工務部の一部署(コストマネジメント室)という位置づけでしたが、2020年にコスト設計部として独立。2023年にはエンジニアリンググループからコンサルティンググループという社内組織に移り、名称もコストコンサルティング部に変わりました。

建設コストの「納得感」を得る

宮澤

先ほど米山さんも言ったように、クライアントとコスト感を共有することは、価値観を共有するということだと思います。単純に当初予算内に納めればよし、というものでもなく、建築は一品生産なので、規格品のように決まった金額というものはありません。クライアントが最終的な工事費に満足しているのであれば、ある意味それもひとつの正解。そのためには最初に与条件をしっかりと整理して、事業予算を精度高く策定し、最後まで一貫して適切にコントロールすることが重要です。その後の長いプロジェクト期間の途中で事情が変わり、コストが増えそうになった場合も合理化策を提案するなど、クライアントの納得が得られるように調整を進めます。

小池

説明の仕方も重要ですよね。数字だけ並べても分かりにくいので、資料には比較グラフなどを盛り込み検討しやすいように工夫しています。また、根拠とする情報には中立性や確実性がなければ、納得感を得られません。そこは当社の130年以上にわたる歴史に裏打ちされた豊富な実績を十分に活用しつつ、建設コスト動向のモニタリングなど、日々の情報収集も欠かさないようにしています。

米山

参考資料として数値データは必要ですが、説明資料として分かりやすいのは、類似建物との比較です。継続案件の場合であれば、前に建てた建物との比較を行います。ただし、場所が違えば与条件は違うので、建設コストも当然変わってきます。本当に建築は一品生産。そのあたりを丁寧に説明することを心がけています。

宮澤

特に昨今、建設時期が数年違えば、建設コストは全く変わってきます。建設業界では常識とされることでも、「理解はするけど、納得はできない」というケースもあって、異業種のクライアントにも分かりやすい表現に変えたり、最後に「よい買い物ができた」と思っていただけるように、常にみんなで知恵を絞っています。

三菱地所設計の各職能の連携と、コストマネジメントの位置付け

THEME 02
建物の構想段階から着工時まで、必要不可欠なコストマネジャー

想像力を働かせて、リスクを洗い出す「おせっかい」役

米山

昨今は建物の規模が大きく複雑化しているため、設計もコストも監理も、それぞれがより深く、より広い専門知識や技術が求められるようになり、複数の職能でチームを組んでプロジェクトにあたります。ただ、本来どの職能でもコスト感覚は持っていなければいけないもの。その中で私たちの重要な役割は、とにかく想像力を働かせて、コストに影響を及ぼしそうなリスクを洗い出し、チームと共有することです。

宮澤

企画を練る構想段階など、まだ図面がない場面でも、これまでの経験をもとにアドバイスします。話が膨らんで事業予算をオーバーしそうであれば、与条件やアイデアを整理して軌道修正するなど、時にはプロジェクトの推進役を担うこともあります。こんなに前に出るコストマネジャーは当社ぐらいかもしれません(笑)

米山

多分、社内では相当に「おせっかいな人」と思われていると思います(笑) 図面には描かれていない部分まで想像し、「このまま行くと予算に納まらなそうだけど、本当に大丈夫?」と確認したりもします。良くも悪くもおせっかいだな、と自覚はしています。

宮澤

ない袖はふれないし、お金のことなので誰かが言わざるを得ない。若手でも、自分の考えを誰に対してもしっかりと表現することが求められるので、コストマネジメントを3年も経験すれば設計者と対等に打ち合わせできるようになります。

小池

先輩方の図面に描かれていない部分を想像する力は、本当にすごいと思います。特に仮設計画や施工方法は自分で想像しなければならず、こうした知識や考える力はコストコンサルティング部に来てからさらに身に付いた気がします。

一番嬉しいのは、無事に着工した瞬間

宮澤

コストマネジメント業務は基本的に自社の設計・監理物件の全てに発生します。新築物件から改修物件まで、プロジェクトのタイプも多岐にわたり、基本的には1物件を2人程度で担当します。現在、コストコンサルティング部には兼務を含むと約20人が在籍していますが、小さい物件も含めると、ひとつのチームで10~20件くらいを同時並行で担当することもあります。

小池

もちろん全部が常に動いているわけではなく、どの設計段階でどんな作業が必要になるかは分かっているので、スケジュール調整はしやすい仕事だと思います。2人体制をとっているので、急な対応が必要になった場合も心強いですね。

米山

基本的には着工までが私たちの仕事です。施工会社が提示した見積もり金額の調査とその後の調整が山場で、クライアントが合意して工事契約が締結され、無事に着工を迎えた時が一番嬉しい瞬間ですね。工事中のコスト管理は工務部が監理者として担当するので、引き継いだあとは気にかけつつ、竣工を待つばかり。見積もり調整で苦労した部分が実際どう納まっているのかなど、竣工した建物を見るのは楽しみですね。

宮澤

大きなプロジェクトになると、建築・電気・機械・⼟⽊など、それぞれに専任のコスト担当者を付けて、とりまとめ役のコストマネジャーが社内調整をします。今、東京駅近くで工事が進んでいる「TOKYO TORCH Torch Tower」(高さ385m、延床面積約55万㎡)では、2017年から2023年9月の着工まで担当していますが、着工を迎えた時は本当にようやく肩の荷が下りた思いでした。本当にいろいろありました。


THEME 03
コストマネジャーになるためには

まずは「建物はどう建つのか」を体験する

宮澤

現在、当社では工務部で採用されると、まずは現場で監理業務を数年、その後コストコンサルティング部で数年、経験を積みます。その後に本人の意向や適性、業務状況に基づき監理またはコストマネジメントに再配属という流れです。建物がどうやってつくられるのか、まずは現場に出て、見て、触って、感じることが重要というのが基本方針。ビルの工事現場なんて学生の頃にはまず経験しない世界なので、百聞は一見にしかず。現場を知ることで、見積もりや図面を理解するスピードは格段に上がります。

米山

私も現場で鉄筋を触った時に、こんなに重たいものかとビックリしました。この鉄筋はひとりでどれくらい運べるのか、この工事には足場を架ける必要があるのか、脚立で済むのか、オフィスの天井裏がどういう部材で構成されているのか、といった現場での知見は、確実に今の仕事に活きていると思います。

小池

私は最初に3年間現場を経験して、現在、コストコンサルティング部に来て3年目なのですが、「最初に少しコストを経験してから現場に行く」というルートがあってもいいかな、と感じています。新卒でいきなり現場に飛び込んだ時、専門用語だらけで、本当に右も左もわからない状態でした。コストの仕事で図面や見積もりを隅から隅まで見ていると、どういう項目が必要か、どういう材料があるかなど、さまざまなことが理解できます。その知識をもって現場に行けば、より多くの知識を吸収できたかもしれない、と思ったりもします。どちらが先の方がよいのか、一長一短あると思いますが、両方経験した方がよいことは確かです。

宮澤

新人に限らず、現場を見ることは、見積もりや図面を読み解く感覚を研ぎ澄ますうえで大切なことですね。実際にプロジェクトが進む中で論理的な思考や説明スキルを磨いていくわけですが、これはコストマネジャーに限らずどの職能にも必要なもの。材料や施工方法に関する専門知識はもちろん、建設全般にわたる幅広い知識を身につけられるのも、この仕事の魅力だと思います。

三菱地所設計がコストコンサルティングに加わるプロジェクトの進行
プロジェクトの川上から川下まで、一貫して建設コストのコントロールに携わります

■ THEME 04
コストマネジメントに特化することのやりがいとは

中立性を失わずに、妥当な工事金額を見極める

宮澤

コストマネジメントは、クライアントや設計者と想いを共有しながらコストをデザインするのが仕事。プロジェクトマネジメント(PM)やコンストラクションマネジメント(CM)はクライアントに代わって品質や工程、コストなどの管理を行うのが主な仕事です。当社には三菱地所のインハウスの設計事務所だった長い歴史があり、また今も三菱地所グループの建物を多く手掛けているので、クライアントに寄り添うCM/PMといった職能が日本に普及する前から、同じようなスタンスで業務を行ってきたといえます。三菱地所が「公正、透明で信頼を第一とした企業活動」を旨としており、コストではその姿勢が今もしっかりと息づいています。

小池

例えば、施工会社から上がってきた見積内容の調査をした時に、見積もり落ち(図面に書いてあるものが見積書に計上されていないこと)を発見したことがありました。それをきちんと指摘できた時は、施工会社からも感謝されて、この仕事をやっていてよかったと思いました。

米山

クライアントから見れば、見積もり金額が上がってしまうことも発生しますが、それが妥当な工事費であり、見落としたままにしておくと困ってしまうのは現場です。安全や品質の確保に影響を与えかねません。クライアントのために仕事をしつつ、中立性は失わないようにしています。それがないと施工会社との信頼関係が築けません。
また、特に日本はお金に関してはっきり表に出して言わない文化がまだ少しあるので、いきなり最初から本音を見せていただけないこともありますよね。クライアントの事業内容を理解して、建築にどれくらい予算をかけられるのかを想像してみたりもします。その後、課題を乗り越えたりする中で、いかにクライアントの懐に入れるか。そこが難しいところなのですが、その分、信頼いただけた時は、この仕事のやりがいを感じます。

宮澤

施工会社を決める際、複数のゼネコンから見積もりをとる案件が多いため、リアルな工事単価が情報として集まってくる。ある意味、今の建設業界の実態を把握しているとも言えるわけで、それらを元に適正な工事金額を見極めることができます。誰かがひとり勝ちするということではなく、社会の中で上手にお金が循環するように働きかけることで、次につながっていくと信じています。

  1. PM(プロジェクトマネジメント)は、発注者の求める条件に合った予算内・工期内でプロジェクトが完了するようにプロジェクト全体のマネジメントを行うことであり、CMよりさらに広範囲な業務となります。
  2. CM(コンストラクションマネジメント)は、専門性の高い技術者が、発注者側で建設プロジェクトをサポートする業務を指します。

OTHER ROUNDTABLES

Update : 2024.07.18

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