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2010.07.01

連載|ものづくりの視点 No.39

行幸通り-東京駅前に広がる貴重なビスタ

大内 政男

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このスペースのデザインの魅力は、街路であるという性質上当然であるが「何もない」ところにある。とはいえ、このデザインプロセスには土木や建築の専門家ばかりでなく都市計画、工業デザイン、造園の専門家など各方面の識者が参画している。中央帯は落ち着いた色調の御影石で帯状に舗装され、その両側にはベンチと一体となった御影石の笠木を持った低い立ち上がりの植栽帯、クラシックなテイストの照明灯、地下通路へのガラスボックスの階段室・エレベーター室、そして銀杏の木だけで構成されている。このミニマルなデザインは実に見事である。

 

この通りに直行する「丸の内仲通り」は幅員21メートル、整備がほぼ完了した行幸通りより南側(有楽町方面)は斑岩の舗装、数種の街路樹、ストリートファーニチャーや彫刻、デザインされた街路灯、そして何より通りに面してブランドショップやレストランなどが連なり、お洒落でとても濃密な空間を構成している。

 

この対比が実に見事である。有楽町側からこの仲通りの濃密な空間を楽しみながら行幸通りに出るとその瞬間、目の前にビスタが広がり、さらに中央帯にまで歩を進めると皇居へ繋がる歴史的な眺めと東京都心の意外なほど大きい空、また、東京駅はまだ工事中であるが、完成した時のその眺めの素晴らしさも容易に想像することができる。

 

仲通りは、現在進行中の丸の内1丁目、大手町地区のプロジェクトの完成とともに、今後、神田川方面まで賑わいを持った快適な歩行者空間として整備されていく予定であり、これからも時代の流れの中でその姿を変えて行く。同様に行幸通り周辺のビルもまた時代の変遷の中でその姿を変えていくことになるだろう。そういう中にあってこの行幸通りが、100年先も皇居と東京駅を正面に見る歴史的なパースペクティブを持つ街路として、都心にあっても東京駅上空と皇居に繋がるその空の大きさを体感できる貴重な空きスペースとして変わらずにあり続けるであろうということは、丸の内にとどまらず、東京という都市にとって非常に大事で素晴らしいことだと考える。是非一度この行幸通りの中央帯に立ち、ミニマルなデザインの素晴らしさと東京の歴史的なパースペクティブ、そして東京の空の大きさを実感してみて欲しい。特に夕暮れ時が筆者のお勧めである。

Profile

元株式会社三菱地所設計 代表取締役社長

大内 政男

おおうち まさお

Update : 2010.07.01

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