株式会社三菱地所設計(所在地:東京都千代田区、代表取締役社長:谷澤 淳一)は、「社内賞2022」の受賞作品を決定しました。同賞は、企画力・デザイン力・技術力のより一層の向上・共有と、当社ブランドの構築に寄与することを目的として、優れた作品や技術を表彰する制度です。2001年の会社設立から今年で22回目を迎えました。審査にあたっては社内審査員に加え、外部審査員としてMOUNT FUJI ARCHITECTS STUDIO 原田真宏 氏(芝浦工業大学教授)、同 原田麻魚 氏(東京理科大学・早稲田大学非常勤講師)、野部達夫 氏(工学院大学教授)を迎え、作品賞6件(うち優秀作品賞3件、作品賞2件、特別賞1件)、環境・技術賞2件、業績賞10件を選定しました。
また、当社のコーポレートブランドスローガンである「+EMOTION 心を動かし、未来をつくる。」にちなんだ「+EMOTION賞」には2件を選定しました。
三菱地所設計「社内賞2022」選考結果
各賞の主旨
作品賞 | 各職能技術の協働の成果という観点から、その企画力、創造力、デザイン力、構造設計、設備設計、積算、工事監理など各職能技術およびランドスケープや環境共生などによる社会への貢献度などを総合的に評価し、優れた作品。(特に優れたものを「最優秀作品賞」、優れたものを「優秀作品賞」とする。審査会が特に必要と認めた場合、個別のテーマが特に優れたものに「特別賞」を授与することもある。) |
---|---|
環境・技術賞 | 広く地球環境への寄与に積極的に取り組んだ「建築・設備、又はそれらの融合によるもの、ランドスケープなど」。保存技術やリニューアル技術、そのほか社内で発表された技術書、当社主体の発想により取りまとめたエンジニアリングに係る要素技術やシステムや論文など。 |
業績賞 | コンペ・プロポーザルで特定された作品のほか、コンサル業務としての成果や業務改善に寄与した技術のうち優れた業績。 |
+EMOTION賞 | 当社のブランド価値である「総合設計力」「都市への洞察力」「本質と品の追求」に加え、新しい価値を生み出す取り組みが特に顕著であったもの。 |
■ 優秀作品賞
NHK佐賀放送会館
「情報・文化・交流の核となる、まちなか再生のさきがけ」をコンセプトに、地域に根ざした情報発信拠点の実現を目指した。地域に親しみと誇りをもって迎え入れられる佇まいとして、焼き物が有名な「佐賀」を体現する建築を計画。原料となる陶石から得た力強い印象を、放送機能を守る堅牢な建物の姿に重ね、外装の凹凸が生み出す陰影が時間の概念を現す「景観装置」とした。関係者の協力を得て、陶片を外構や内装建材の一部に活用する方法を開発。廃棄される陶片の存在を、建築を通じて伝える。
これまでに数多くの放送施設を担当してきたチームによる集大成として、技術面、環境面に加え、地域とのつながりにおいても総合力を発揮。複雑な与条件の中、外装デザインや地域に開かれた提案まで高度にまとめられた作品であると評価された。
所在地 | 佐賀県佐賀市 |
用途 | 事務所(放送局) |
階数 | 地上3階、地下1階、屋上1階 |
延床面積 | 5,267.62㎡ |
構造 | 鉄骨造(基礎免震構造) |
■ 優秀作品賞
ふかや花園プレミアム・アウトレット第 1 期
国内10施設目のプレミアム・アウトレットの計画。従来のプレミアム・アウトレットと異なり、本アウトレット(屋外通路型の商業施設)は計画地およびその周辺の自然や産業・文化など地域の魅力を活かし、「地域の発展にも貢献する観光拠点」を目指した。近隣の景勝地である長瀞の水景や木々、深谷市名産のユリの花といった自然の要素や、当地の特徴的な建築素材である「煉瓦」などをヒントに、それらの要素を抽象化・再構築した。
単に買い物をする商業施設ではなく「思い思いの過ごし方を楽しめる場所づくり」をテーマに、これまでのプレミアム・アウトレットにはない、新しいデザインの試みがなされていることに加え、隣接施設との連携や地域環境の取り込みが評価された。
所在地 | 埼玉県深谷市 |
用途 | 商業施設(アウトレット) |
階数 | 地上1階、一部2階建て |
延床面積 | 34,577.83㎡ |
構造 | 鉄骨造 |
■ 優秀作品賞
Slit Park YURAKUCHO
有楽町エリアの中心に位置する「新国際ビル」のオフィスエントランスと裏路地の改修計画。ビルの隙間や廊下など屋内外の空間を活用し、既存ビルに実験的なリノベーションを加え、新しい街の魅力づくりに取り組んだ。新たに地層のような土壁で覆ったビルのエントランスから通りの活気を引き込み、そこからつなげた裏路地にも、これまで当エリアに見られなかった賑わいを生み出した。既存ストックを利活用し、新たな都市空間の在り方を提案している。
小規模なプロジェクトながら、建物単体や敷地内に留まらず、都市・地域に対する提案として社会的インパクトがあるものとして評価を得た。同時に、汎用性ある提案として類似の問題を抱える諸都市の雛形になり得る点、設計者と事業者がやり取りを重ねて組み立てていった点が、当社の設計の幅の広さを示すものであると言及された。
所在地 | 東京都千代田区 |
用途 | 事務所 店舗 |
階数 | 地上9階、地下4階、塔屋2階 |
延床面積 | 77,484 ㎡ |
構造 | 鉄骨鉄筋コンクリート造 |
■ 作品賞
持田製薬株式会社本社
東京都新宿区四谷に位置する製薬会社の本社ビル建て替え計画。間口の広い敷地形状を活かし、水平方向を強調した連窓を計画、スパンドレル部のPCa版に凹凸をつけ、色を切り替えた外観とすることで、同社の堅実性と同時に独創性のある社風を表現した。また、立地条件を活かした空調負荷の低減や、照明・空調のエネルギー消費量の低減等によりZEB Readyの認証を取得し、人や環境に配慮した建物となっている。
新型コロナ禍での進行プロジェクトとして、施主と「今求められる本社施設とは?」について議論を重ねてワークプレイスを創出。意欲的な社内プロジェクト体制の構築により、意匠面・環境面を含むさまざまなテーマを突き詰めることができた点が評価された。
所在地 | 東京都新宿区四谷 |
用途 | 事務所、駐車場 |
階数 | 地上8階、屋上1階 |
延床面積 | 5,784.35㎡ |
構造 | 地上:鉄骨造/地下:鉄筋コンクリート造 |
■ 作品賞
成徳幼稚園
住宅密集地における「居ながら工事」による幼稚園の建て替え計画。建築・各室の隅角部に壁や柱を設けない構造計画により、個々の領域の輪郭を曖昧にしながら分ける/つながる空間づくりを目指した。
子どもの教育環境と周辺地域が程よい距離感を保ちつつ、園での活動、園外で展開される地域住民の生活の気配、空や緑の移ろいなど、内外部の事象がひと続きの風景として視覚化され、社会生活を始める子どもが、周囲との多様な関係性を感じ取れるオープンな環境とした。住宅地という場所性と、時にこれと相反する開放的な空間の両立が評価された。
所在地 | 東京都北区 |
用途 | 学校(幼稚園) |
階数 | 地上3階、地下1階、屋上1階 |
延床面積 | 1,498.95 ㎡ |
構造 | 鉄筋コンクリート造 (壁式) |
■ 特別賞
Trinity Tower
インドネシア・ジャカルタ中心部の業務エリアに建つ、高さ246mのオフィスタワーと商業施設・駐車場のアネックスからなる複合施設。「Tranquility(上質さ)」をデザインテーマに掲げ、搭状比約1:5.5のプロポーションを生かしたシンプルなデザインとし、周囲の超高層ビルと群をなして都市景観に調和をもたらす計画とした。
本プロジェクトは、当社のインドネシアでの初竣工プロジェクトとなり、これまで丸の内をはじめとする日本のまちづくりで取り組んできた都市デザインの理念を当地で体現。遠隔地でのプロジェクトながらディテールや仕上げ選定に至るまで深いつくり込みが行われたことが評価された。
所在地 | インドネシア・ジャカルタ東京都北区 |
用途 | 事務所、商業施設、駐車場 |
階数 | 地上50階、地下1階、屋上1階 |
延床面積 | 143,166.77 ㎡ |
構造 | 鉄筋コンクリート造 |
■ 環境・技術賞 大賞
フクダ電子本郷事業所 ―企業環境の健康を支える建築設備計画
東京都文京区本郷に位置する医療機器メーカーの建築設備計画。「社員の健康:執務環境の快適性確保」「経営の健康:機能冗長性やBCP機能の確保」「地球環境の健康:省エネ性の確保」を軸とする環境コンセプトを提言した。
コンセプトを実証する場となる建築計画も取り込んだ環境設計の実現力や、設計の初期段階から設備担当者が参画するなど、組織設計事務所としての強みが存分に発揮された点が評価された。また、シンプルな小さな技術の積み重ねでもZEB Ready相当の環境性能が達成できることを実証するなど、ZEBの先を行くパフォーマンスが示されたことも評価された。
■ 環境・技術賞
超高層テナントオフィスビルにおける ZEB Ready 取得
(スマートスペック設定に向けて)
当社が設計・監理を行う「(仮称)内神田一丁目計画」にて、三菱地所のオフィスビルで初となる「ZEB Ready(事務所部分)」の認証を取得した。取得にあたり各種エネルギー低減メニューの感度分析のケーススタディおよびコスト検討を実施して導入項目を精査したほか、設備容量の最適化を図る設計基準を新たに策定した。ZEB認証は一般的に建物規模が大きいほど達成が困難とされるが、これらの取り組み・検討支援により、水準を満たす高層テナントオフィスビルを実現した。
三菱地所グループ全体を主導して議論を重ね、今日必要不可欠な環境提案を新たな設計基準としてまとめ上げた企画力が評価された。ここで開発されたスペックが、これからのオフィスビルのスタンダードなスマートスペック(環境に配慮した新たな標準スペック)として、世の中を変える「処方箋」となることが期待される。
■ +EMOTION賞
MJD 標準ディテール英語版・東南アジア版の作成
海外における設計プロジェクトでは、当社の業務範囲(主に基本設計まで)の中で、日本で培ったノウハウを生かした建築を生み出し、必要な性能を担保することが求められる。そうした目的の達成策のひとつとして、当社の標準ディテールの「英語版」と、東南アジアの風土、慣習、施工性に配慮した「東南アジア版」を作成した。400ページを超える標準ディテールは、翻訳とともにメーカー、施工者、ローカルの建築事務所や設計経験者にヒアリングし議論を重ねながら、当地で実現できるディテールへのカスタマイズを行った。
多様な言語話者・多様な人種が集まりプロジェクトを推進するにあたり、本ツールがひとつの「共通言語」として、より良い建築を建てるためのコミュニケーションの一助となることが期待される。
■ +EMOTION賞
大手町ビル SKYLAB
1958 年竣工、地上9階建ての「大手町ビル」の屋上空地を、ビル就業者を中心とした地域のワーカー向けにワークプレイスとして活用すべく再整備した。竣工当初はさまざまに利用されていたものの、その後、長らく閉鎖されていた屋上空地を、“超高層ビルに囲まれた谷間”とマイナスに捉えるのではなく、“時間の経過によって生成された、現代的で都市的な空中の中庭”とプラスに捉え、新しいワークスタイルを実現できる場所のひとつとして開くことを目指した。
今回、ビルの屋上に対する積極的な操作としては類例のない規模のプロジェクトであるとして評価された。
以上