外皮、照明、空調の融和がもたらす、快適性と省エネ性の両立
茅場町グリーンビルディングは、これまでのオフィス環境を一新する複数の環境先端技術をテナントビルとして日本で初めて実導入し、より快適で、よりスマートで、より環境に優しいオフィスの実現を目指しました。こうした取り組みをメインファサードや執務空間に表現するとともに、輻射空調や知的照明システムなどのさまざまな先端技術を集中的に導入し、設計上、一般のオフィスビルに比べ使用エネルギー(CO2 換算)の約 45%を削減します。
エコグリッド
室内への日射を遮るため、外観の特徴となっているグリッドの縦材は日射遮蔽ルーバーとなっています。これにより、秋分から春分にかけては概ね終日、また夏期においても朝 9 時以降日射を遮り、空調の負担を軽減します。また横材はライトシェルフとして、グラデーションブラインドと合わせて室内に効率よく昼光を導入し、天井面を照らすことで、オフィスの照度を抑えても十分な明るさが確保できます。
メゾネット換気
北側中央 3 スパン分の窓面下部ガラリから冷たい空気を導入し、吹き抜け上部の自然換気窓により室内で暖められた空気を排気しています。フロアごとに完結しているため、階ごとの圧力差が等しく、換気量も一定になります。
見える化
エネルギーの使用状況を見せるだけでなく、ワーカーに省エネ活動を促し、またその活動の成果も「見える化」するシステムを導入しました。
4つの照明システム
環境配慮型次世代照明システム
本建物では、全館に LED 照明を採用し、明るさ(照度)や光の色(色温度)を変えられるシステムを含む、4つの異なった照明システムを導入しました。
それぞれのコンセプトに基づき快適な執務空間を実現することで、知的生産性や労働生産性を向上させるとともに、不要な照明を減灯・消灯することで省エネルギー効果も両立します。
知的照明システム
天井照明を個別に調節し、必要な場所に必要な照度と色温度を提供することで、各ワーカーが好む照明環境を作り出す。不要な照明を減灯・消灯し、省エネ化も実現します。
タスクアンビエント照明システム
通常よりも照度を抑えた天井照明(アンビエント照明)にて全体の明るさ感を確保しながら、ワーカーの手元に必要な明るさをタスク照明で確保します。
人感センサーシステム
部屋全体を一定の照度と色温度にて照明しながら、天井面設置の人感センサーにより、不在の場合はゾーン単位で減灯・消灯や減光制御を行います。
ハイブリッド輻射空調
輻射空調により、気流感が少なく静穏で温度ムラのない快適なオフィス空間を提供するとともに、空気ではなく水によって冷熱や温熱を運ぶことで効率よく熱を伝達し、省エネルギー化を図っています。また夜間に冷熱を生成・蓄熱することで、日中の空調消費電力のピーク負荷を抑制しています。
Designer's Voice
設計者
電気設備設計部 / 2002年入社
水取 寛満
Hiromitsu Mizutori
オフィスの生産性の向上と省エネ性を追求するため、1日の生体リズムに合わせて照明の明るさと色を自動で変化させる照明や、明るさと色を自分の好みに合わせて自由に変えられる照明など、4つの照明システムを採用しました。
ビル完成後もご入居者に協力いただき、アンケートや計測で実運用における評価をまとめたことで、電気設備学会 施設奨励賞をいただくことができました。また、計画から運用までお世話になった同志社大学の三木教授、計測やデータ整理をお手伝い頂いた学生の皆さんとの協働もよい思い出です。
※所属はプロジェクト担当時点
設計者
機械設備設計部 / 2009年入社
中村 駿介
Shunsuke Nakamura
次世代オフィスビルの創出を目指して三菱地所と協業し、当時まだ普及していなかった先進的な空調・照明技術を、80㎡の実験オフィス、360㎡の実証オフィス、と徐々にスケールアップしながら知見を積み重ね、いよいよ実戦投入されたのがこの「茅場町グリーンビル」です。
商用賃貸オフィスでのシステム天井による全館放射空調は日本初の試みで、大変な産みの苦しみがありましたが、竣工後多くの人に評価していただけたことが、設備設計者として大きな糧になりました。
※所属はプロジェクト担当時点
Data
物件名 | |
---|---|
所在地 | 東京都中央区日本橋茅場町1丁目7-3(住居表示) |
敷地面積 | 387.43㎡ |
延床面積 | 2,869.95㎡ |
規模 | 地上10階、地下1階、塔屋2階 |
高さ | 46.65m(最高高さ) |
竣工 | 2013年5月 |
主要用途 | 事務所、駐車場 |
設計・監理 | 三菱地所設計 |
施工 | 前田建設工業(建築)、九電工(知的照明システム等)、トヨックス(輻射空調システム) |
受賞 |
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