近年の大規模建築における構造用木材の利用を受け、木造オフィスの可能性を追求しています。ここでは構造用CLT(Cross Laminated Timber)を使用したオフィスをスタディしました。目指すのは、柱・梁・天井に木材を現しで使用し、木に囲まれたオフィスです。防火、耐震の条件をクリアするアイデアを盛り込み、木の可能性を最大限に引き出すことで、新たなオフィスの空間を実現します。
オフィスに必要な大スパンと見通しのよさ
CLTは板材の繊維方向を90 度回転させて交互に貼り合わせた木製素材です。通常の合板に比べて強度が高く、壁状の構造体として使うことが可能です。構造体に木を使う木造建築の可能性が広がると、木材の需要が広がり、森林の保全や脱炭素社会へ向けての足がかりになってゆきます。
CLTの強度は構造壁としての大きな可能性を秘めますが、オフィスとして使う時、いくつかの課題があります。最も大きなものは、耐火性能。そして壁としての存在が、オフィスのレイアウト自由度や見通しを阻害してしまうこと。これらを解決するために、鉄骨の周りをCLTで囲むハイブリッド構造を考えました。鉄骨が長期荷重を負担し、地震や風圧などの短期荷重に対してCLTが耐震要素として働く構造形式です。CLTは鉄骨の座屈止めとしても働く合理的な構造なのです。このハイブリッド部材を柱として外周に配置。その柱間にCLTの間柱を置きます。どちらも壁状の構造体でフィン状に小口を外に見せながら外周を囲みます。内側に柱や壁が現れず自由にプランニングができ、戸外への眺望も妨げません。
設備計画と一体となった
CLTパネルとH鋼のハイブリッド梁
基準階の梁にもハイブリッド構造を用います。柱と同じく鉄骨梁をCLTパネルで挟み込んだハイブリッド梁にはCLTパネルに挟まれた箇所を換気のルートとしたり、照明ボックスを納めることで設備計画と一体化します。CLT材に燃え止まり層を入れることで、天井面を前面木製とすることができます。壁だけでなく、梁と天井面も木の現し素材で構成され、構造、仕上げ材ともに木製のオフィスが実現します。
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Update : 2019.01.17