曾禰達蔵の退社後に丸ノ内建築所の所長を務めた保岡勝也による第八号館の正面建図(以下、立面図)にひときわ目を引くイレギュラーな窓廻りのデザインがある。なぜ、ここだけ他と違うのだろう?
「第八九十十一号館一階平面図(以下、平面図)」には建具ではなく、点線の開口部として示されている。もう一度、立面図を見てみると仲通りから直接アプローチできそうにない。煉瓦造にしては開口の間口が広すぎる気もする。この立面図は検討案の一つなのだろうか?
詳細図を見てやっとわかった。平面図には飾り棚、矩計図にはI 型鋼を組み合わせた梁が図示されており、腰壁には地階への採光用の窓が計画されている。この窓廻りは明治時代には仲通りにおけるショーウィンドウであったのだ。さらに、平面図の開口部の点線表現から、第八号館一階は入居する予定のテナントの要望に合わせてファサードを設計していたのではないかと想像できる。
当時のテナントである中央亭(フランス料理店)はこの大きなショーウィンドウに何を飾ったのだろう?
セセッション風白色系の外観
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住谷 覚
すみたに さとる
古図面と出会って数年。設計者の思いを想像しながら向き合うことを大切にしています。描き込まれた大先輩のスケッチに共感したり、逆に悩んだり。図面に残された謎が解けた瞬間が一番の楽しみです。
Update : 2016.12.01