今回はジョサイア・コンドル設計の三田小山町の本邸に落成したルネッサンス様式の洋館をご紹介したい。残された図面の中に平面図と2種類の立面図があった。竣工後の古写真と見比べると、どうやら立面図は当初案と変更案らしい。施主要望であろうか、プランが変わり、当初案のシンメトリーを意識した整ったファサードはアシンメトリーに変更されている。しかし、図面をよく見てみるとベランダ出入口廻りのスパン割や窓枠のディテールなどは変わっていないことに気づく。プランは変わっても、コンドルのデザイン・ボキャブラリーはきちんと残されている。これは写真からは解明できない情報であり、まさに残された古図面が現在に伝えるメッセージである。ちなみに、戦災による焼失で再建された建物が今日のイタリア大使館。松方邸の面影を建物に見ることはできないが、明治期の面影は庭園に随所にとどめられている。
中段左:ベランダ側立面図(当初案) 中段右:ベランダ側立面図(変更案)
下段左:出窓側立面図(当初案) 下段右:出窓側立面図(変更案)
当ウェブサイト内のコンテンツ(情報、資料、画像等)の著作権およびその他の権利は、当社または当社に使用を認めた権利者に帰属します。法律上許容される範囲を超えて、これらを無断で複製、転用、改ざん、頒布などをおこなうことはできません。
Author's Profile
住谷 覚
すみたに さとる
古図面と出会って数年。設計者の思いを想像しながら向き合うことを大切にしています。描き込まれた大先輩のスケッチに共感したり、逆に悩んだり。図面に残された謎が解けた瞬間が一番の楽しみです。
Update : 2015.03.01