2015年に解体された富士ビル敷地の北半分に建っていた第十三号館は、曾禰達蔵の後を受けて丸ノ内建築所のトップ建築家となった保岡勝也時代(明治39 年~ 44 年)の作品である。平面図を見ると、窓と窓の間の細い煉瓦壁の中に黒い点が…。いったい何だろう?さらに調査を進めると「ボールト建込詳細図」というのが出てきた。煉瓦壁の中に鉄の棒を差し込み、壁全体を上下で締め付ける構造だ。これは貸事務所の窓面積を増やす要求に対応した新たな耐震煉瓦造の工夫である。そして、窓の一部にはダブルサッシュが施されていた。第一号館から順番に図面を見ていくと煉瓦造事務所建築は着実に進化している。耐震構造は帯鉄からボールトへ、暖房は暖炉からスチームへ、軒蛇腹は石造からテラコッタへ、などなど。第十三号館は煉瓦造時代の事務所建築の完成形と言っていいだろう。
下:第十三号館東側建図
右:ボールト建込詳細図(明治40 年12 月9 日)「保岡」「内田祥三」の印が見られる
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野村 和宣
のむら かずのり
建築や都市を鑑賞する際、専門家の意識を取り除いて、できるだけ素の人間としての自分になって観るように心がけています。美味しい料理が理屈なく美味しいと感じられることと同じように。
Update : 2014.09.01