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2012.03.01

連載|ものづくりの視点 No.54

継続的な地球温暖化阻止のための取り組みを

東條 隆郎

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このような日本の厳しいエネルギー状況の中で、地球規模の課題であるCO2削減などの地球環境改善・地球温暖化阻止のための取り組みは重要度を増している。一つには再生可能エネルギーを増やしていくという取り組みである。震災以降、太陽光発電や風力発電はもとより、最近では日本における数少ない資源である地熱発電についても取り組みが始まっている。しかしながら地熱発電に適する場所は国立公園内が多く、環境問題や景観の問題等のかなり難しい課題をクリアしなければならないことは言うまでもない。太陽光発電や風力発電にしても同じように、国土の狭い日本においては立地に適した場所は限られていることなどの課題を整理クリアする必要がある。そのためにも関連する法の早急な整備と社会的コンセンサスの形成が求められている。

 

もう一方は、省エネルギーの取り組みである。現在の建築においては、新築される建物については様々な環境負荷低減の取り組みがなされ、従前の建物に比べ25%から30%を超える削減がなされるものも登場してきている。今後もZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)など更なる新たな手法・技術革新を進めなければならない。また、建物の環境価値・性能の向上を促す仕組みである日本の「CASBEE」や米国の「LEED」といった認証制度が徐々に社会に受け入れられてきていることもその現れであり、環境性能の高い建物の発注者や所有者への社会的評価にもつながってきている。新築の建物についてはこのように更なる取り組みが期待できるところまで来ており、良質なストックが形成されつつある。地球温暖化阻止に向け、我々建築設計に携わる者としても更なる向上を目指し取り組み続ける必要があり、その役割は大きい。

 

また既存の建築に目を向けてみると、通常は設備更新・機能更新に合わせ建物の持つ環境性能の向上が図られている。最近の事例であるが、築30年を超える大型のオフィスビルの改修において、各種更新計画の中での多様な取り組みにより、新築当時の性能を回復するだけでなく、現在の新築ビルと同程度の高い性能を持つまでになった例もある。今後原油・石炭・天然ガスなどの原材料の高騰も予測されることから、省エネルギーに対する投資はLCCの観点からも十分検討する価値がある。一般的に事務所建築のライフサイクルコストの中でイニシャルコストは約17%前後であり、光熱費が約30%を占めていることからも、エネルギーの調達コストの増大が予測される中、イニシャルでの取り組みの効果は大きい。

 

産業部門と住宅部門起源のCO2排出量は全体の約半分以上を占めている。また、日本では2020年までに温室効果ガス削減目標25%、2050年には80%を掲げている。地球環境が深刻さを増している中、現時点での取り組みの重要性はますます高まっている。

Profile

元株式会社三菱地所設計 代表取締役副社長執行役員

東條 隆郎

とうじょう たかお

Update : 2012.03.01

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