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「まず、その街を好きになる」

都市開発マネジメント部
プランナー 三好 史晃

ここに、どんな建築があったらいいのか。都市開発プロジェクト初動期の舵取り役として、将来あるべき街の姿を思い描きながら企画を練り上げる、都市開発マネジメント部のプランナー。大規模再開発になると完成まで10 年以上。その街に通い続け、ひとつの計画にまとめていく三好史晃の+EMOTION は、「まず、その街を好きになる」です。

敷地すら決まっていないスタートも

主に、企画段階から基本設計までのフェーズで、クライアント、社内チーム、行政、関係権利者など、多方面とのコミュニケーションを重ね、計画を取りまとめていく仕事です。まだ相談レベルだったり、敷地が定まっていなかったり、不確定要素が多いところからスタートすることがほとんどです。それは逆に言えば、展開の可能性も多分に秘めているということ。例えば、単純なオフィスビルの計画に、その街に必要な要素を見つけてプラスしてみる。地域貢献することでクライアントもボーナスをもらうことができ、街にとってもクライアントにとっても、より望ましい計画をつくることもできるわけです。時には、周囲をもっと巻き込んだ計画に展開することもあります。

さまざまなスケールで思考する

スタートから4、5年で完成するのは早い方で、10年越しのプロジェクトも珍しくはありません。今、工事が進んでいる超高層ビル「KABUTO ONE」は、約10ha(10万㎡)を対象とする兜町・茅場町再開発の第1弾プロジェクト。計画がスタートしたのは2011年で、入社3年目の頃から関わっています。2019年に着工し、2021年に竣工予定。新しい街全体が完成するのは、さらにずっと先です。舵取り役なので、関係者といかに信頼関係を築いていくかが最も重要。知識や技術ももちろん大事ですが、この仕事は、街が好きで、人が好きであることが第一です。
あと大切なのは、さまざまなスケールで考えること。4つの街区を再編・統合するKABUTO ONEの敷地は約3,300㎡ですが、計画している時はエリア内の複数プロジェクトを俯瞰してヘクタールの規模で考えたり、地下鉄駅と接続する部分や整備する道路の幅員についてはミリメートルレベルでディテールを検討したり。スケールを行ったり来たりする視点は不可欠ですね。

「あったらいいな」をつくる

プロジェクトが始まると、まずはその街に通います。仕事でだけでなく、夜飲み歩いてみたり、週末に家族を連れて行ってみたり。通っていると、どの街にもいいなと思うところがあります。プロジェクトに入り込むには、好きになることが一番。そこから敷地の特性やクライアントの要望を踏まえ、ここにどんな建築があったらいいのか、どのような要素や機能を付加して地域に貢献したらいいのかを考えます。例えば、名古屋駅前で長く親しまれてきた「大名古屋ビルヂング」の建て替えプロジェクトで、低層部の屋上に設けた緑のオープンスペース「スカイガーデン」は、「駅前に潤いを与える緑があったらいいな」を実現したものです。駅周辺は地下街が発達していることもあり、地上の人通りがまばらで、コンクリートに囲まれた無機質な印象でした。ビル全体のデザインコンセプトに「緑の丘に立つ大樹」を掲げ、外装や商業エリアの内装にも展開されています。

2016年に竣工した大名古屋ビルヂング。名古屋駅から降りた時に感じた、コンクリートに囲まれた窮屈な街の印象を、ホっとできる雰囲気に変えたいという思いから生まれた屋上庭園。駅前に潤いを与え、市民やワーカーの憩いの場となっている

街の将来像を掲げる

最後は大人数のチームで動く都市開発も、最初はクライアントと小人数で膝を突き合わせ、プランを立てるところから始まります。うまくいく時もつまずく時もクライアントと一緒になって悩んだり、ときには感謝してもらえたり。ゴールがずっと先の分、日々ちょっと進むごとに達成感を感じます。プロジェクトが進むに連れて関係者が増え、さまざまな立場、考え方の人が加わっていきます。その中で、チームみんなが同じ方向を向くために、「街の将来像」を掲げることを大切にしています。その時、絵を描くだけでなく、大名古屋ビルヂングのデザインコンセプト「緑の丘に立つ大樹」のように、言葉にすることが不可欠。テナントリーシングなど、最後に参加する人まで伝わるように、わくわくするような絵、遊び心のあるフレーズをつくるのが理想です。いろんな街で、みんなにもその街を好きになってもらえるような計画をつくっていきたいですね。

最近は神田や赤坂のプロジェクトを担当。神田:お祭りでにぎわう。路上で飲むビールは格別。夜風とガヤガヤ感が心地いい(左)。タイムスリップしたような、なんとも言えない佇まい(右)

赤坂:繁華街から一歩入った路地裏。細い道に明かりが灯り、引き込まれる(左)。階段の先が気になり登ってみると踊り場にはカフェが(中)。これから夜のにぎわいを迎える夕暮れの赤坂(右)。


[インタビュー:2020.2.25]

+emotion まず、その街を好きになる 三好 史晃

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