130th ANNIVERSARY

Youtube

MY +EMOTION

「見えるものも、見えないものも」

都市環境計画部
プランナー 大橋 良乃介

都市環境計画部は、土木設計、ランドスケープ設計、環境マネジメントの3領域をカバーする土木職能集団。企画段階から設計、工事監理まで、建築と都市、両方のスケールを横断しながら、人が集まる場所のカタチを考え続ける大橋良乃介の+EMOTIONは、「見えるものも、見えないものも」です。

想像を超える

建築設計事務所の中の土木職能として入社して9年。橋などのインフラ構造物や、広場などのランドスケープの設計に限らず、宅地造成設計や都市計画、交通計画など、分野も規模も異なるさまざまなプロジェクトで経験を積んできました。今はまだ自分の専門領域を定めず、将来的には先輩方のように、複数領域にわたって専門性をもつプランナーになることが目標です。数々のプロジェクトを通して、最近、重要だと感じているのが、「みんなの想像を超える」提案をすること。我々の仕事は何かしら提案することがメインとなるので、クライアントは「どんな提案があるのだろう?」という好奇心が少なからずあると思うのです。小さなことでも、そういった提案を積み重ねることで、使い手となる住民や時にはプロジェクトメンバーの想像を超えるものを実現していきたいと思っています。

現在担当している海外プロジェクト。都市計画マスタープランを検討中

場所のポテンシャルが
「見えやすい」カタチを考える

多岐にわたる都市環境計画部のプロジェクトは、カタチが「見えやすい」仕事と「見えにくい」仕事に分けることができます。橋や広場の設計など、目に見えるカタチをつくる仕事で考えるのは、その場所が持つポテンシャルを引き出すこと。地元の人が当たり前と考えているものや、その場に脈々と流れる歴史、時にはクライアントの熱い思いなど、見えなかったもの、隠れていたものを「見えやすくする」カタチにしていきたい。できるだけ敷地には足を運んで、それが難しい場合でも地域の図書館で土地の歴史や植生を調べたり、古い地図を探したりします。東京芸術劇場と一体的に整備された公園のリニューアルプロジェクト「池袋西口公園 GLOBAL RING」では、かつて近くにあった「丸池」の記憶を広場計画に反映しています。埼玉県の秩父盆地に降った雨が湧き水となってできた池で、池袋という地名の由来になったとも言われます。この公園では、池に湧き出る水のエネルギーをダイナミックなリングというわかりやすいカタチにして浮かべ、池袋西口らしいアイコンとなるとともに、地域の方々が親しめる空間づくりを目指しました。秩父産ヒノキの無垢材を用いた円弧状のベンチも配しています。

2019年11月にリニューアルオープンした池袋西口公園。最大径46m、螺旋を描くパーゴラ「GLOBAL RING」の周囲に、大型ビジョン付きの舞台棟や木造のカフェ棟を配した。音や光と共にデジタルアートが展開される

秩父産ヒノキのベンチ(左)。鉄骨の原寸図面を確認中(右)

複雑なパズルを解いて
「見えにくい」計画を整理する

一方、交通やインフラ計画などの仕事は、目に見えないものが相手。例えば、横浜のとある駅事務室の移転プロジェクトでは、終電と初電の間のわずかな時間を使って、いかに電車を止めずにシステムを移転するかが大きな課題でした。まずは複雑に絡み合った条件をひも解き、最適解を求めていきます。また、ランドスケープなどの見えるカタチをつくるプロジェクトにおいても、これらの最適解が土台となります。池袋西口公園は「野外劇場」でもあります。直下に地下鉄が走り、高い建物が密集する街なかに巨大な工作物をつくり、フルオーケストラによるクラシックの生演奏をも可能にするため、見えない部分でさまざまな工夫を凝らしました。上から見るとキレイに整っている舗装の下には、舞台関連設備などのための電気配線や、イベント開催用の給排水設備などのインフラが張り巡らされ、GLOBAL RINGのパーゴラもよく見ると、音響設備や照明器具、仮設用電源などのさまざまな機能をもっています。目に見えないディテールの積み重ねが「美しいアイコン」を成り立たせているのです。

見えるものも、見えないものも

実は、池袋は10代の頃によく遊んだ街で、入社後は豊島区の都市計画マスタープラン策定も担当しました。思い出のある街に関われたり、マクロとミクロ、双方の視点で街づくりに携われるのは当部の醍醐味だと思います。また、池袋西口公園は、社内の各職能のほか、ランドスケープ設計事務所や照明設計事務所、劇場コンサルタント会社など、さまざまな人とのコラボレーションのカタチでもあります。プロポーザルから竣工までの約3年間、それぞれがそれぞれの過程で少しずつ人々の想像を超える提案を重ねていったことで、その場に大きなインパクトを与えつつ、地元の方々にも愛されるものを実現できたと感じています。これからも、「見えるもの」と「見えないもの」の間を行ったり来たりしながら、みんなの想像を超えるものをつくっていきたいですね。

中学時代から自然の美しさを教えてくれた山岳部。その美しさは人がつくるものをはるかに超えている(左)。
学生時代に旅したセビリアで理想を感じた、音楽にあふれる広場(右)


[インタビュー:2020.2.4]

+emotion 見えるものも見えないものも 大橋 良乃介

ARCHIVE