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「感覚と論理のバランスをとる」

工務部 コストマネジメント室
エンジニア 浅野 裕輔

今、設計中の建物の工事にいくらくらいかかるのか。設計の要所要所で、図面から工事に必要な部材などの数量を拾い出してそれぞれの価格を設定、概算を出してコントロールしていく「コストマネジメント」の仕事。時にはプロジェクトの推進役も買ってでる浅野裕輔の+EMOTIONは、「感覚と論理のバランスをとる」です。

「表に出る
コストマネジメント」

概算とは、設計段階において、設計事務所が経験やノウハウをもとに第三者的な立場で算出・提示する、世の中一般的に妥当と思われる工事費の予測です。設計はこの概算も視野に入れながら進められ、設計が終了すると、今度は施工会社(候補)が図面をもとに工事費を算出、見積金額を提示し、発注者と合意すれば工事契約となります。この流れの中で、組織設計事務所に属する当室の仕事は、まずは当社で設計中の物件の「概算」。そして、施工者から提示された見積に間違いがないか、妥当かどうかをチェックする「見積調査」。図面、施工方法、実勢価格を照らし合わせながら、第三者的な立場で適正を確認します。時には他社設計施工物件での見積調査のみを請け負うこともあります。また、発注方式の助言や工事請負契約の協力を含めた「発注者支援」も行います。
算出した概算や見積調査金額は、いずれも設計者やクライアントに説明したり、施工者と協議する場合もあるため、とにかく大切なのが論理的根拠です。なぜこの概算になるのか、なぜこの見積が妥当なのか、資料を作成したり、打ち合わせに同席して自ら説明することもあります。設計者はいろいろやりたい、クライアントには予算の制約がある。その両方を実現するアイデアを提案することもあります。一般的に、積算は裏方仕事と言われますが、当室の特徴は「表に出るコストマネジメント」ですね。

正解があるのにたどり着けない

設計には欠かせない概算ですが、企画段階から基本設計や実施設計、コンペまで、フェーズによって、もとになる図面がごく簡単なものだったり詳細なものだったりします。詳細なほど概算の精度は上がりますが、概算が低すぎても高すぎてもプロジェクトに大きく影響するので責任は重大。適正な概算を算出するために必要な情報の収集も大事な仕事です。リアルタイムなコスト感覚はもちろん、図面には描かれていない部分まで想像して読み解く感覚を研ぎ澄ませることが求められます。しかし、そもそも何が正解かと言えば実際に契約される工事費であって、そこには施工者の営業判断なども加味されてしまいます。フェーズや物件に合った概算の算出方法もありますし、経験値によるプラスαが大切なのです。

論理的思考とバランス感覚

大学で構造を研究した後、工務職能として入社。2~3年毎に、工務部(工事監理)、コストマネジメント室、リノベーション設計部、コンストラクションマネジメント部と経験を積み、3年前に現在の部署に戻ってきました。とくに工事監理での現場経験はとても楽しく、どう建物が建つのか、プロジェクトがどう進行するのかを実体験できたのは、今の自分に生かされていると思います。概算の算出は各フェーズの設計後の仕事になるので、どうしてもしわ寄せが来ることが多く、また数字の正確性ばかりを追っていても仕事になりません。プロジェクトの性質やスケジュール、チームの個性を踏まえて、どうすればうまく行くのか、どう説明すれば納得してもらえるのかを考えることも重要です。つまり、建設全般にわたる知識や、論理的な思考に加えて、コミュニケーションやマネジメント、さまざまな局面で適切なバランスを取れる能力が不可欠。そのバランス感覚は、新人時代、多様な先輩方にお世話になった経験を通して培われたものだと思います。

構造を学んだ学生時代。予測→試験体作成→実験→分析の毎日

丸の内パークビルディング・三菱一号館の現場で工事監理を経験した新人時代

信頼される喜び

設計や工事監理と異なり、短いものは数週間単位で次々とやってくるプロジェクトを回し、同時並行で担当する数も多いので、短距離走を続けているような感覚です。基本的には工事契約の協力までが主な仕事で、最後の竣工まで携われないのがちょっと寂しいのですが、最近はプロジェクトの枠を超えて意見を求められることもあり、設計者やクライアントの納得感が得られるように論理的な説明を心がけ、数字面でプロジェクトを支えているという自負をもってやってきたことで、社内外から頼りにされているという実感が湧いています。現場をやりたいという気持ちも片隅にはありますが、最近は多様な発注方法が普及していたり、一筋縄ではいかない面白いプロジェクトも増えてきているので、もっと経験を積んで、コストマネジメントというプロフェッションを追求して行きたいですね。

社内での交流会。同じ部署のメンバーとボルダリング(左)と、同じ月が誕生日のメンバーとの飲み会(右)

趣味はサックス演奏。大学の学園祭でのJAZZ演奏(左) 。社会人になってからは個人レッスンに通ったことも。演奏会に向けて練習中(右)


[インタビュー:2020.1.22]

+EMOTION 感覚と論理のバランスをとる

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