私たちはこれまで、さまざまな開発を通じて最適なまちづくりを実現してきたが、従来の制度手法では実現できないものも多くあった。そこでは常に、現在の制度手法に捉われることなくまちづくりのあるべき姿を構想した上で、行政の政策動向と連携し、最先端の制度を有効活用することでこれを実現してきた。
まずは特例容積率適用地区(国内第1号、2002年)や大手町連鎖型再開発手法(当地区再開発のために創設)が挙げられる。「新丸の内ビルディング」では行幸地下通路の整備を行ったが、これは、東京都特定街区運用基準の改定により敷地外貢献の評価が可能となり、これを第1号案件として活用することで実現した。また、「連鎖」第4次である常盤橋地区は特定街区の都内第1号案件であった「日本ビルヂング」を含む再開発であるが、この特定街区廃止と都市再生特別地区決定を含む10件の都市計画変更によって東京の新たなシンボル創出を目指す先進的な事例である。
かつて証券マンの活気で溢れていた兜町エリアは、証券取引の電子化以降、街の役割が変化し、その街の再活性化のために、新たな賑わいや金融イノベーションを生み出す都市機能の導入が必要とされた。そこで、エリア独自の機能を誘導する「高度利用型地区計画」を東京都内で初めて適用し、金融ビジネス交流機能を備えた「KABUTO ONE」プロジェクトが計画された。これを皮切りに、兜町エリアの段階的なまちづくりが動き出している。
私たちは東京都の示す都市像を都市開発プロジェクトにより実現するための調査・分析・提案を行った(東京都「都市開発諸制度活用方針」のあり方調査:東京都発注/2017-19年度)。行政や最新の街づくり動向の把握だけでなく、これまでの多くの大規模開発で培った都市計画・設計ノウハウを活かし、制度の適用エリアや、駅と街が一体となる取り組みの評価スキーム、エリアマネジメント活動に資する公開空地評価等について、まちづくりの実現と事業性がWIN-WINとなる活用しやすい制度設計の提案を行った。
大丸有エリアにおいて、次世代新技術を導入したスマートシティを実現する取り組みが始動している。その未来像を描く取り組み「大丸有スマートシティビジョン」の策定において、「新たなモビリティに対応した都市のリ・デザイン」として、パーソナルモビリティがアシストする大規模な回遊歩行空間や、建築とインフラを統合した新しい交通システムのあり方を提案した。これらは、建築や道路、駐車場等のあり方、私たちの暮らし方を変えていく。
三菱地所設計の制度活用に関する年表
ウォーカブルな空間では、道路と沿道建築が一体的に活用でき、変化する活動内容に柔軟に対応できる。歩行者とパーソナルモビリティが共存する日常時。
地上・地下のモビリティがスムーズに結節し、新技術で生まれた地下駐車場の余剰空間は賑わい空間へ。
働き方改革や技術発展による暮らしの「当たり前」の変化や、環境問題や人口減少への対応等、これからの都市は大きな変革を迫られるであろう。そんな革新的変化に対応しつつ、「ここにしかない」を楽しめる都市のあり方を自由に描いてみた。このような想像力を高める取り組みを通じて、今後も街のあるべき姿を構想し、まだ見ぬ未来の街に求められる空間や機能と、そのルールの実現にチャレンジし続けたい。
未来の街のイメージ
動きのあるオフィス
空間評価
面積評価に限定せず、空間シミュレーションなどを活用し、みんなが面白い!と思える空間を積極的に評価。地上だけでなく、ダイナミックな空間があちらこちらに。
ビル上温泉街
ユーザー特区
実際のユーザーが街へ投資を行い、まちづくりに直接関わることで、行政では評価できないニッチで切実なニーズを実現。
次世代インフラ拠点の整備
共同貢献
建物単体ではなく、エリア全体での貢献を評価。時間軸も主体も異なる複数のプロジェクトによる大きな都市貢献が実現可能に。
水陸空次世代シャトル
インフラ概念改革
技術発展に伴い、上空に新たなインフラが出現したり、不要となった道路などの既存インフラは用途の概念も含めてリノベーション。
ビル中ドローン集配所
Re 都市計画
都市計画決定された内容であっても、時代のニーズに合っていることを条件に柔軟な変更を許可できるように。
365日いつでもイベント
エリマネ勢力拡大
エリアマネジメント団体は、自治体に変わる新たな公共として、その役割を一部移管。「街の経営」という観点で収益を上げ、より積極的な活動が実現。